カスハラ対応なんて モーヤダ!

クレーム・暴言・不当要求から逃げる方法

カスハラ対応なんてモーヤダ!クレーム・暴言・不当要求から逃げる方法

日々の業務の中で、理不尽なクレームや暴言、不当な要求に直面することはありませんか? 「あんたのせいで、どんだけ時間の無駄をしたと思う?時間返せ!今すぐ返せ!」「お前、接客もまともにできないのか?ああ?バカなのか?あああああ?こんな嫌な気分にさせられたんだから、金払う義務ねーよな」書いてるだけでも嫌な気分になります。

一方、カスハラ対応として弁護士や研修講師から「初動対応をうまくして」「何があっても冷静沈着に」なんて言われても・・・「誰でも簡単にカスハラ対応が出来るなら、カスハラなんて言葉は生まれないんじゃ~」

本稿では、そんなカスハラから逃れるための方法や心構えを従業員視点で面白く解説します。

見出し

  • モー最悪!覚えたくもないカスタマーハラスメント(カスハラ)の種類と具体例
  • 別にカスハラ対応のプロになりたいわけじゃないけど。一応知っておきたいカスハラ対応
  • これぐらいのカスハラ対策してよ!従業員からのメッセージ
  • これマジ!?ケース別カスハラ対応失敗事例解説
  • カスハラ対応なんて頑張らなくってもいい!社員が元気に楽しく働ける職場と社会をつくろう!
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モー最悪!覚えたくもないカスタマーハラスメント(カスハラ)の種類と具体例

騒ぐ、わめく、暴言、恫喝、暴行、モノを投げる、モノを壊す、帰らない等など。カスタマーハラスメントは、ある程度グループ化、分類できそうです。この見出しでは、カスハラの基本的な種類と具体例を紹介し、どのような行為がカスハラに該当するのかを明確にします。

カスハラの種類が分かることで「え?私もカスハラうけてる!?」と、ご自身の置かれている状況を客観的に再確認することもできますし、カスハラとまでは言えないグレーなカスハラもあるかもしれません。この辺りをまずは確認してみましょう。

何をされたらカスハラになる?カスハラの基本的な定義

カスタマーハラスメントとは、「顧客(カスタマー)+嫌がらせ(ハラスメント)」を組み合わせた言葉で、顧客からの暴言、脅迫、暴行、不当要求等、理不尽で迷惑の限度を超えた要求や態様で、再三止めるように言っても聞かず要求や態度がエスカレートする行為を言います。皆さんがよく耳にするパワハラやセクハラの親戚のようなものでしょうか。またカスハラは、いわゆるお客さまや利用者だけではなく取引関係にある企業の相手先も対象となります。

厚生労働省が定めた「カスタマハラスメント対策企業マニュアル」では、カスハラの定義を【顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・様態が社会通念上不相当なものであって、当該手段・様態により、労働者の就業関係が害されるもの】としています。 簡単に言うと「お客様からのクレームや言動で、①内容の妥当性を欠くもの、または②妥当性があってもその手段・態様が社会通念上不相当なものであって、従業員の就業環境が害されるもの」と言えます。

たまに「カスハラって法律用語ですか?」と思われる方がいますが、カスハラは法律用語ではありません。ゆえに「カスハラをしたら○○」のような罰則も当然ありません。しかし、窓口で職員にモノを投げつけてケガを負わせたとなれば、「カスハラかどうか?」と吟味する暇もなく直ぐに警察へ通報するでしょう。なぜなら、それは事件だからです。今のケースは暴行や傷害といった比較的分かりやすい例でしたが、「バカ野郎」と言われたらそれだけで名誉を傷つけられた行為となるのでしょうか?聞き捨てならない台詞ではありますが、一度程度であれば感情が高ぶってしまいついうっかり口にしてしまったのかもしれません。ところが、この言葉を、何百回も言い続けてしまったらどうでしょうか?このようなケースから見てカスハラは、カスハラかどうかを検討、認定することよりも職場のリスクマネジメントとして、【このような言動があったらこうする】と予め対応をシミュレーションしておく必要があります。そこで、ポイントとなるのが「内容の妥当性に照らし」「社会通念上不相当」なのかと、その行為の程度や頻度からカスハラに当たるのか考えていけることが重要です。

また、カスタマーハラスメントや不当要求対応に関する対応力調査を長年してきた筆者の経験では、カスハラははじめから「不正の意図」があるケースと、「エスカレートした結果」と呼べるケースの二パターンが代表格です。「不正の意図」があるカスハラは、カスハラというよりは詐欺や恐喝であって金品を奪うために、虚偽や無理難題を要求する行為を指します。ただ、中には不正の意図は無いが謝罪要求等が「謝れ」→「詫びるまで許さない」→「詫びても許さない」→「土下座しろ」→「土下座して当然だ」と信じられないくらい大声で騒ぎまくりエスカレートしてしまう人もいます。このエスカレート現象には「怒りが中心」のカスハラッサーも多いですが、「優越的な地位を利用して快楽を得ている」かのようなカスハラッサーもいます。ちなみに余談ですが、筆者は「怒り」と「快楽」の違いを表情変化から読み取りカスハラ応対方針を判断していけます。通常、ここまでの対応力は社員や職員には不要ですが、リスクマネジメントの専門チームメンバーであれば、知っていて損はなくむしろ知らなければ対応できないようなリスク・クライシス事案もあります。

これってカスハラですよね!カスハラの種類と言動、具体例そして、カスハラは義務化へ

次に、具体的なカスハラの事例を確認してみましょう。これは、筆者が研修、コンサルティングをしてきたクライアントの一例です。クレームが多い業界は伝統的にクリーニング業ですし、飲食店も多いですね。これを見て「私の職場のカスハラのほうがまだましかも」等と思わないで下さいよ!カスハラは全てNOですから。

(1)クリーニング店で商品を渡した後日、「思い出のコートのボタンが無くなっている。あのコートは20年前フランス留学中に亡き父が買ってくれた思い出の品。同じボタンをつけてくれても許せない。お詫びとして、100万円慰謝料として出してほしい」

(2)飲食店で接客態度が気に入らなかったようで、「お前はこの仕事辞めろ。頭の悪い奴はこの仕事向いてないんだよ。明日また見に来るからな。明日辞めてなかったらただじゃおかねーぞ。おい、店長、今日中にこいつをクビにしとけよ。クビにしてなかったらお前の指導力が無いってことで、お前らの土下座動画バラまくからな。泣いてもぜってーに許さんからな」

(3)たばこメーカーへ、とあるマンションの住人から「下の階の方がベランダでたばこを吸ってるんです。臭くて嫌ですし最近たばこの煙のせいで咳が出るようになってきたの。わたしから下の階の方に注意をしたら角が立つでしょ。あなたたちがたばこを作ってるんだから、メーカーとしての責任ですよね。直ぐに下の階の方に注意してベランダでたばこを吸わない様にしてくださいね。咳がこれ以上酷くなるようだったら、健康被害を出した責任としてあなたたちを訴えるから」

(4)某クリニックの医師から医療機器メーカーのフィールドエンジニアへ「あなたのところの機械がまた動かなくて困ってるんだよ。いつ来れるんですか?早く来て直してもらわないと、患者が●ぬよ。ねぇ、分かってるのこの状況?今から患者の声聞かせるから、病院につくまで電話切るなよ。うううう(うめき声を聞かせ続ける)」

(5)リゾートホテルの夕飯でコース料理の内容を勘違いしていたお客様が「どうしてホテルの夕食にステーキが出ないんだ?ホテルのディナーはステーキに決まってるだろう。ステーキじゃないんだったら俺は金を払わないぞ。俺は○○ホテルの総支配人を知ってるんだ。このことを総支配人に言ったら首が吹っ飛ぶぞ。早くステーキを出せ」

(6)学校に乗り込んできたPTA役員が「先生は熱意をもって教育していない。私ほど、この地域で情熱をもってやっている人がいますか?ぜんぜん、教育の事、子どもの事を考えてないよ。役所もまったく地域の事を考えていない。私が、どれだけ思い悩んで、夜も眠れないか分かりますか?私をここまで苦しめているのに、どうして学校は変わろうとしないのですか?」とご自身のやる気に対して教員や役所はちゃんとやっていないと何時間も主張し続ける。

これらは一例ですが、カスハラの定義に該当するケースとして以下のものがあります。
■顧客等の要求の内容が妥当性を欠く場合
・企業等の提供する商品サービスに瑕疵や過失が認められないケース
・企業等の提供する商品サービスと要求内容と関係が認められないケース

■要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当な言動の場合
①長時間拘束、反復型  
 ・継続的(繰り返し)、執拗な(しつこい)言動  
 ・拘束的な行動(不退去、居座り、監禁)
②暴言、威嚇、脅迫型  
 ・精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)  
 ・威圧的な言動  
 ・差別的な言動  
 ・金銭補償、商品交換要求  
 ・従業員個人への攻撃・要求
③暴力型   
 ・身体的な攻撃(暴行、傷害)
④権威型  
 ・土下座の要求  
 ・謝罪文の強要
⑤誹謗中傷型  
 ・SNS投稿  
 ・嫌がらせを意図した撮影、録音
⑥セクハラ型  
 ・性的な言動

この様な行為にあった、または目にした場合、皆さんはカスハラを受けている可能性があります。特に、暴力などはカスハラ云々の問題ではなく、警察へ連絡し対応してもらうべきケースだと考えられます。また、過剰なクレームは、サービスの欠陥を超えた過剰な要求や主張を繰り返しますし、さらに不当な要求は業務範囲を超えたサービスの要求や従業員個人への過度な負担を強いる行為が含まれます。

「こんなことに耐えながら働く目的って何なんでしょうか?」と考えてしまう事案ばかりですが、これを看過してきたことを反省し企業にはカスハラ対策が義務付けられたのです。

東京都では2024年10月、カスタマーハラスメントの防止をめざす条例が可決、成立した。カスハラ防止に焦点を当てた条例は全国初で「顧客等から就業者に対し、その業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、就業環境を害するもの」と定義し「何人も、あらゆる場において、カスハラを行ってはならない」と定めています。ただ、罰則規定等は無いため、「効果は期待できるのだろうか」という授業員の声もあるようです。

お客さま、それ犯罪行為ですけど・・・悪質なカスハラは犯罪?カスハラ対応と法律

悪質なカスハラは、場合によっては犯罪行為と見做されることがあります。
例えば、暴力行為や脅迫、名誉毀損などは刑法に触れる可能性があります。これらの行為は、単なる不満表現を超えたものであり、従業員の安全を脅かす重大な問題です。また、個人情報の不正取得や無断での録音・撮影もプライバシーの侵害に該当する可能性があります。

これらの行為が発生した場合、従業員は躊躇せずに警察へ通報したり、上司に報告し然るべき法的対応等を検討できるようにしたことがカスハラ対策の義務化です。悪質なカスハラに対しては、法律の力を借りて適切に対応することが重要ですが、法律家でもない私たちが「それは●●罪だ」等と刑法の条文を口にし犯罪者呼ばわりすることは適切ではないでしょう。

なぜなら、仮に従業員の名誉を傷つけることを言ったからといってそれが法の定める罪になるかは、罪を犯す意思の有無や有責か等、更に判断すべきところがあるからです。刑法の条文を覚えせるようなカスハラ対策研修もあるようですが、そのようなことよりは「この様な行為があったら応援者が警察へ電話をする」といったように具体的な加害行為を踏まえて、次にどのような行動を取るかそのシミュレーションをしておくことを筆者はお勧めします。

なお、参考としてカスハラに関連する犯罪行為も確認しましょう。下記の行為に遭遇した場合にどう対応するかをあらかじめ決めておくことがカスハラ対策ですね。

①机を強くたたいたり、イスを蹴飛ばしたりし、暴力行為や騒音で業務を妨げる行為。 窓口や店内で暴れたり騒いだり、店員を怒鳴ったり、ほかの利用者も巻き込んで喧嘩を売ったり恐怖を感じさせる様な発言をする行為。殺人を口にしたり爆破予告をする行為等は、威力業務妨害に当たるかもしれません。

②営業時間が過ぎたり対応困難となっているのでお帰りくださるようにお願いしていても、受け入れず施設や建物から対処しない、居座り嫌がらせをしたり迷惑をかけたり、暴れたりする行為は不退去に当たるかもしれません。

③従業員がカスハラッサーからの脅迫や暴行に対して恐怖を感じ、土下座や謝罪文の作成及び朗読等、義務の無い事を強制させられたと感じる行為は、強要に当たるかもしれません。

④従業員の生命・身体・自由・名誉・財産に対し害を加えることを告知し、恐怖を感じさせられた行為は脅迫に当たるかもしれません。代表的な言葉は「殺すぞ」「骨の一本や二本じゃ済まないぞ」等、誰もが恐怖を感じる程度であって脅迫内容を実行できると感じられることが必要です。

⑤従業員に対して暴力や相手の弱みに付け込み脅迫し恐怖を感じさせ、金品を脅し取ろうとされた場合は、恐喝に当たるかもしれません。「誠意を見せろ」とか「慰謝料」等の話がこのケースに当てはまります。

別にカスハラ対応のプロになりたいわけじゃないけど。一応知っておきたいカスハラ対応

カスハラに直面したとき、どう対応すればいいのか悩んでいる方は多いでしょう。そもそもカスハラ対応力なんてカスハラする人がいなければ不要と言えば不要。

それよりもサービス力向上に時間とコストをかけたほうが会社としては正しいはず・・・とネガティブになってしまいますが、職場でのカスハラ対応に苦慮しているので何とかしたい方のためにカスハラ対応の心構えを簡単にご紹介します。

上司が「うまくカスハラ対応しろ」と言いますけど・・・簡単にできるわけないだろ!!

下記の様なカスハラ対応の姿勢が一部でささやかれていますが・・・
・一人でカスハラ対応しない:
 →複数人で対応してとか記録係をつけてとか言いますが、私ワンオペですが何か?

・一人でカスハラに悩まない:
 
→上司が話しを聞いてくれないのですが何か?

・一人でカスハラを判断しない:
 
→法務や外部専門家に相談してって言いますが、わたしアルバイトですが何か?


どうでしょうか?
一見、カスタマーハラスメント対策のように見えますが、カスハラを受ける職場は様々で、必ずしもうまくいかないアドバイスもあるような気がします。 他にも、こんな対応がカスハラの適切な対応だという研修もありますが・・・
・顧客の言動に対して、冷静に動揺せずに対応する:
 →酔っ払いが怒鳴っていたら、普通動揺するだろ!

・顧客の要求や主張を確認する:
 →モノを投げ机を叩きまくる人の話をどうやって聞くのじゃ?

・顧客の主張や要求を踏まえ、法的責任の有無を検討する:
 
→ホウテキセキニン??

・上記の結果から、然るべき回答をする:
 →荷が重すぎる~モーヤダ!


この様に「これをやってこそカスハラ対応だ」と言われても「言うは易し行うは難し」。特に、カスハラは窓口や対面接客、コールセンターなどアルバイト従業員や一般社員がその被害に合いやすい構造になっていますよね。こういった働く人の気持ちや状況に即した対応策でないことを言われるとかえって従業員のやる気が失せ、辞めたくなってしまうかもしれません。まさにカスハラと会社の板挟み。これではセカンド・カスハラでは?なんて思ってしまいますから、企業側が示すカスハラ対応はその職場、従業員にあった最適な内容でなければ効果が乏しいということです。

上記のカスハラ対応を聞いたアパレル社員は「できるわけないじゃん」と失笑気味でした。 某お客さま相談室メンバーは「法律家でもない人が法的責任の有無を判断ねぇ?」と怪訝そう。この様に多くの従業員が、具体的なサポートや指針がない、指針があっても的を射ていない対策の中で、結局は個人の判断に頼らざるを得ない状況に置かれているのがカスハラ対応なのです。だからこそ、従業員を独りで悩ませない困らせない【カスタマーハラスメント対応方針】や組織で対応するためのノウハウをまとめた【カスタマーハラスメント対応企業マニュアル】が必要なんですね。

つまり、「カスハラ対応はこうしよう!」と研修で言われるよりも「自社や事業者のサポート体制を何とかしろ!」と会社に対して強く対応と責任を求めてもらったほうが従業員にとっては嬉しいのです。

カスハラは現場で起きている!

カスハラ対応は決して簡単ではありません。
お客様のクレームや不当要求に対して、現場では冷静に対処することが求められますが、正直に言って恐怖を感じて硬直したり、感情的になってしまったりすることのほうが多いです。現場での迅速な判断と対応が求められる中で、従業員は想像以上にプレッシャーを感じていることが多いのです。

想像してみてください!
ワンオペの深夜の飲食店で外国人従業員が、酔っぱらった人たちに暴言を浴びせられているシーンを・・・ コールセンターでお客様から「上司に変われ」と言われたのでその旨をSV(スーパーバイザー)に伝えると「うちのコールセンターでは上司対応はないから」と断られ、その後30分以上怒鳴られ続けた結果、仕方なく電話を代わったSVが「お前、さっきのオペレーターと同じことしか言えないじゃないか?上司のほうが駄目じゃねーか」とかえって炎上しているシーンを・・・

カスハラは、実際に現場で起きる問題であり、現場の従業員が最前線で対応しなければなりません。
しかし、カスハラ対応は、コミュニケーション困難な方と話し合うスキルや怒っている方の怒りを鎮火させながら解決に向けて話すスキルなど極めて高度な対応力が必要です。現場での対応が難しい理由の一つは、アルバイト従業員や一般社員といった経験値も対応力の乏しい方々が最前線にいて会社側が対応してくれないことが挙げられます。

この様に、以前からあったカスハラ、不当要求、過剰クレームに会社が真剣に向き合い、予測できないカスハラを予見し、予め抑止・予防する対策を講じるとともに、従業員が安心して仕事に励み困ったお客様が来た際は自信をもって対応できるよう適切な体制やサポートを提供し、現場で働く不安を会社側が取り除く努力が求められています。従業員が心身ともに健康でいられる環境を作ることが、カスハラ対応の第一歩です。

冷静に対応しろと言われましても・・・カスハラから心身を守る心構え

カスハラ対応法として、
 ①冷静の話しを聞く 
 ②理不尽な要求があったら受け流す 
 ③分からないことは「分からない」と言う 
 ④相手の氏名や住所、連絡先を聞く 
 ⑤理不尽な要求を諦めてもらうように粘る 
 ⑥それでも長時間話すのであれば「警察を呼ぶ」
と言うといった流れがありますが、実際には非常に難しいものです。

頭では理解できてもできないものです。
しかしカスハラ対応調査をしていると、一定の割合でクレームやカスハラへと自ら誘う人、炎上させる人がいるのです。多くの人は恐怖で動けなくなりますが、逆に挑発的に好戦的になってしまう方もいるのがカスハラ対応の最前線です。

筆者は、クレーム対応力や不当要求対応の調査を長年していますが、クレーム対応や不当要求対応が苦手な方、うまくできない方のほぼ100%が【恐怖・脅威に慣れていない】と指摘できます。恐怖に慣れたいなんて思わないよと思う方も多いでしょうが、例えば医師もまだ医学生であった頃は、人の体を切ったり臓器に触れたりすることが恐怖であったかもしれません。警察だって、恫喝、暴力等に一人で立ち向かわねばならない時は恐怖を感じることもあるでしょう。ですから、暴力や暴言をする人に慣れるという視点は、「冷静に対応するため」の前提なのです。

さらに、クレーム対応調査の延長でクレーム発生率を調べていると、「マナーが行き届いている、表情が豊かで好印象、相手に合わせた対応ができる」といった方はクレームや不当な要求に出会う確率が低いとのデータが出ました。これは、コールセンターでも窓口等の対面業務でも同じ傾向なのです。

ここから分かることは、「カスハラから身を守る」ためには、まずご自身の接客やマナー、話し方、表情態度など接遇サービスが高いレベルにあるかどうかがポイントになるということです。クレーム対応やカスハラ対応は、発生後の受け身な対応になりがちですが、明るい対応・誠実な対応をしている人にはカスハラッサーも「この人には不正をしにくい」と不正行為を諦めたり、暴言がエスカレートせずに済んでいることもあると認識していただき、まずは良い接客をすることこそがカスハラの少ない職場を作り、カスハラから身を守ると覚えましょう。反対に、マナーや態度の悪い方が、カスハラ撃退法を学んだところで、かえってカスハラを炎上させてしまうこともあるでしょう。

これぐらいのカスハラ対策してよ!従業員からのメッセージ

これまでは、顧客や利用者からのカスタマーハラスメント(カスハラ)に対して従業員が一人で何とかするというのが一般的でした。しかし、カスハラ対策が企業の義務となった今、カスハラ対策の中身は従業員の就職やアルバイトのエントリー要件にも入ってきてもおかしくなさそうな時代へと変わってきています。

1. カスハラから守ってくれない場合、わたし辞めます:カスハラ対応基本方針

会社や組織は、従業員を守るために「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を定めましょう。コンテンツの中身は以下の内容が基本形です。

(1)「はじめに」制定の趣旨を説明します。人権方針を定めている場合はその方針に照らして検討します。

(2)基本構成は、「カスハラの定義」「カスハラの行為」「カスハラへの対応」「カスハラへの社内体制」「お客さまへのお願い」

特に「社内体制」については、自社の状況に合わせて具体的な体制、対応策を講じましょう。特にカスハラやクレームは、個人的な対応ではなく組織対応であるということを表明しておく必要もあります。ただ、各社のカスハラ基本方針を見ていると、たまにコピペレベルの方針も見受けられます。中身のないカスハラ方針をホームページにアップし具体策も不透明な場合、従業員は静かに退職を決意するかもしれませんね。

2. カスハラ対応の救世主!厚生労働省のカスハラ対策企業マニュアル

カスハラ対応において、厚生労働省が提供する「カスハラ対策企業マニュアル」は非常に有用です。
このマニュアルは、企業が従業員をカスハラから守るための具体的な手順や対策を示していますので、参考にしながら自社に相応しいマニュアルやルールを作りましょう。その際、顧客と接点がある従業員からの意見や現状をアンケートやヒアリングを通じて情報収集し、自社でよく発生するクレームや不当要求、カスハラへの対処法を明確に記載するようにしましょう。

現場対応マニュアルとは別に、危機管理担当、リスクマネジメント担当役員以下のメンバーや法務等がどの様に対応するかも作成します。ここでは、カスハラ被害者へのフォロー、カスハラ相談窓口の設置、安全配慮義務等、リスク観点と人事観点から、企業経営としてどの様にカスハラ対応をするか対策を打つことも必須です。現場任せにしないこと、これがカスハラ対応の義務です。

3. そもそも「カスハラ クレーム」の違い

クレームとは、お客さまからの「ご指摘」や「申し出」を指しますが、一般的には「苦情が発展してやや小言や悪口を言われる」といったイメージを持たれているのではないでしょうか?
正当なクレームは製品やサービスに対する苦言や改善提案で、会社としては傾聴しお詫びすべき事柄でしょう。しかし、クレームであってもお客さまの怒りが増長すれば暴言等につながったり、無理難題をふっかけられたりとカスハラに転じることも多々あります。さらに、クレームを受ける側の態度や謝罪ができない様子、上司や会社サイドのあきれた態度で二次クレーム(はじめは些細な申し出のはずが、会社の姿勢によって大きなクレームへと発展する)になることもあります。

カスハラは、そもそも「不正の意図」があるケースと「お客さまの気質や状況に起因し要求や態度、行為がエスカレート」するケースがあります。ですから、明確にカスハラとクレームの違いがあるとすれば、「不正の意図」の有無ですが、クレームでもカスハラでも初めから不正の意図がなく、担当者や職員と話している中でエスカレートしていき、過度な謝罪要求へと変質したり、相手の態度にカッとして物を投げたりと明確な区別が付けづらいところもあります。

筆者がクレームやカスハラのコンサルティングをしている経験では、このエスカレートした結果カスハラゾーンへ踏み込んでしまう割合は結構高いと感じています。カスハラ クレーム、違いはなかなか難しいですね。

4.カスハラに対する抑止・予防は会社の責務

カスハラ対策を考えるとき、ほとんどの会社が方針やマニュアルを作り最後に「社員研修」へと行き着きます。これは間違いではありませんが、企業統治という観点がある会社は一番初めに「抑止と予防」に力を注ぎます。なぜなら、カスハラは経営問題であり労務問題であるリスクマネジメントの領域だからです。

「えっ!うちの会社、そんなことやってないよ」と思う方も多いかもしれませんが、対面の場合であれば、店頭や入り口に「カスハラストップのポスター」を設置しているケースが抑止・予防策ですね。これも一案ですが、従業員をカスハラから守っている会社は、筆者の様なコンサルタントを入れ、「抑止と予防」「脆弱性の発見」を検討し、職場でカスハラ対応を発生させない様に尽力し、「全従業員を守る」ことを経営陣が明確なメッセージとして発信し実行すべきなのです。

「カスハラの未然防止」これはよく研修会社や講師が使われる言葉ですが、現実問題として未然防止は不可能です。リスクマネジメント実務に携わっている講師であればこの言葉を使わないでしょう。ですがカスハラの抑止や予防はできるものです。大事なことは、企業がカスハラの抑止・予防に努め、職場にカスハラが入るリスクを極力減らしていくということなのです。

5.カスハラ発生時のデータから再発防止を検討・判断する

クレームやカスハラの発生状況についてデータを取っていない企業や行政・自治体が多いと筆者は感じています。例えば、飲食店で暴行された従業員がいてもその報告を会社に上げない、窓口で大声をあげ長時間怒鳴っていてもその対応記録を報告しない、コンタクトセンターで定期的に嫌がらせ電話を入れてくる方の電話を真面目に毎回対応している等。クレームやカスハラの発生状況、発生原因そして対応データを収集、分析、検討し、自社にとって最適な顧客対応方法を取っていない企業が多いのです。それだけ、クレームやカスハラの発生が企業や組織にとって重要なリスクと捉えていない組織が多いからでしょう。

しかし、カスハラ対策が義務づけられた今、カスハラを発生させないために「抑止・予防」「脆弱性の発見・改善」をしていくためにはカスハラやクレームデータの収集分析が欠かせず、これをせずにカスハラ対応研修をしても、結局、顧客対応の最前線にいる従業員にその対応を委ねているのと変りません。

カスハラが発生した際には、そのデータをしっかりと記録・報告する体制やシステムを構築し、カスハラ等を対応する専門のリスク管理チームが再発防止策を検討することが従業員を守ることにつながります。また、クレームやカスハラ発生状況を検討するために、カスハラ発生率を業務運営のKPIの一つに組み込み、カスハラ対策が功を奏しているかどうかチェックし続けることも筆者はおすすめします。

6.カスハラ被害相談窓口の設置:従業員の相談対応やメンタルフォロー

カスハラの対応策の一つとして、カスハラ被害相談窓口の設置が挙げられます。
この窓口は、いわゆるハラスメント相談窓口と同じように「被害相談」をメインとして設置することもできますが、もう一歩踏み込んで社員がカスハラ対応をどうしたらよいかを一緒に対策を打っていくような相談場所とすることも考えられます。

ここで気を付けなければならないことは、「被害相談」の原則は、【助言・指導しない】ことです。「こんな時こうすればいい」「なんで、こう言わなかったの?」等と指導もどきをされるとかえってカスハラの傷が深まることもあります。ですから、会社のハラスメント被害相談の原則は、「被害者の悩みや相談を傾聴」し「しかるべき対応(上司からの支援をしっかりさせる、研修を充実させる、マニュアルの見直し、配置転換等)」を検討することです。被害を受けた従業員から、具体的なアドバイスを求められない限りは【助言・指導しない】をところがハラスメント被害相談のポイントです。

また、カスハラを受けた従業員のメンタルケアは、会社にとって重要な課題です。
特にリスクマネジメントの観点で考えると、リスク管理は回復までが必要な取り組み、対応になるからです。よって被害を受けた従業員が孤立感を抱かないよう、適切なサポート体制を整えることが求められます。可能であれば、専門家によるカウンセリングやメンタルヘルスケアのプログラムを導入することも積極的に検討していくべきところでしょう。

7.カスハラ対応研修の在り方を考える

クレーム研修やカスハラ研修で講師から「毅然と対応」してと言われたけど、毅然と言えないから困っているのよ・・・そもそも暴れまくっている人を対応するなんて怖い・・・このような受講者の声も多く聞こえてきます。そうなんです。クレーム研修やカスハラ研修ではその対応姿勢や作法を教えたいことが先行し、研修企画のスタートラインである受講生ニーズとい最も大事な視点が疎かになっている研修がかなり多いと筆者は感じています。

筆者は、電話対応や対面対応でのクレーム対応力・カスハラ対応力を調査するといったかなりマニアックな仕事を多数こなしてきていますから、クレーム対応やカスハラ対応の際に【そもそも主張ができない人】【そもそも何を話したらよいのか分からない人】【そもそもマナーや接遇がなってない人】のほうが世の中多いことを知っています。

この様な従業員に「毅然と対応しましょう」と伝えたとて、実践では全く実施できないのです。笑ってしまうケースでは、以前コンサルをしていた某料金センタ―(ちなみに電話応対の中で、料金関係のコンタクトセンターへの罵詈雑言は凄まじい!)はオペレーターの破壊力が酷く、利用停止となってキレてきたカスハラッサーに「てめぇが金払ってないからこうなってんだろうが!この貧●人!金払って無くてこっちに迷惑かけておきながら何なんだよその言い方~~。金払ってから電話しろ~(ガチャ)」と、シャウトするような方もその昔はチラホラ。当然、立場上このような対応はおすすめしませんが、このくらいの即応力・反発力の前には何も言い返せないカスハラッサーがほとんどのようです。

カスハラ対応には「正当なことを適切な言い方で言い返す能力」が求められているのですが、そもそも人と話すのが苦手、ましてや主張や反論なんてできない!という多くの方には「まず反応する練習」が必要です。何の訓練も受けていない方は「反射」してしまい「申し訳ございません」を繰り返す方もかなり多いです。これは思考停止なんですが、実際固まる人のほうが多いのです。よって、毅然と対応する以前に、まずは適切に反応できるように思考し行動できるように能力開発をしていくことがカスハラ研修の企画設計においては最重要です。

他に重要な研修企画の視点は、通常のお客さま対応やクレームをエスカレートさせカスハラにまで発展させてしまう担当者や職員もかなり多いという事実です。もともとお客さまが誤解をしてクレームを入れてくるケースは多いのですが、これに対する説明の仕方が相手をバカにするような言い方であったり、さっぱり分からない下手な説明であったりして話しがこじれエスカレート。そこに過剰な表現や要求が生まれてしまう・・・これによって「お客さまが被害者から加害者やクレーマーに」なってしまうこともしばしばあります。ということは、そもそもの接客力や対応力という企業や自治体、行政が社員教育を十分にしておくべきことをしていないことで、偶発的にカスハラが生まれる、その機会を提供していることになるのです。従いまして、カスハラ対策以前に基本的な対応力やサービス提供ができているか、これも企業側がチェックしておく必要があるのです。

また、カスハラの具体例を用いて研修する際は、ロールプレイングのような簡単なものだけではなく、専門的なカスハラ対応シミュレーションを導入することも検討すべきでしょう。筆者が提供している専門的なリスクマネジメント・プログラムでは、40分程度は実際同様のシミュレーションをおこない、その後、対応結果について討議をおこないます。

他には、リスクマネジメント・カスハラ専任チーム向けの抑止予防対策研修、事後対策検討研修や二次対応者向け・組織対応の方法研修、ストレス管理や感情コントロール研修も併せて取り組む必要がありましょう。特に検討すべきは、ワンオペの小売りや飲食業でカスハラが発生したケースのシミュレーションや研修です。特に低価格帯の飲食店や夜間営業の飲食店でのカスハラ発生は、統計データをしっかりと取っていないからこそ明らかとなっていないことが多々あると予想していますが、全産業の中でもトップレベルではないでしょうか。そして、そのような職場にはアルバイトスタッフであるフリーターや外国籍の方もいて対応方法も研修も困難を極めている現状です。

ほとんどの研修会社はクレーム対応の延長上でカスハラ研修を企画していますし、カスハラ対策のコンサルティングやクレーム不当対応力調査をしたことがないので、実践レベルの組織対応研修、二次対応者研修、リスクマネジメントとしてのカスハラ対策研修は提供できません。しかし、上述のとおり、カスハラ対応は相当の専門性が必要となりますし、学習者である従業員の力量や能力に合わせたプログラムを作成しないと効果は全く期待できないと筆者は考えています。

これマジ!?ケース別カスハラ対応失敗事例解説

最後に、業種業態別でのカスハラ対応失敗事例を確認します。「えっ!?失敗事例?」と思われるかもしれませんが、こんな言い方をしたらかえって炎上した揉めたというケースを敢えてご紹介します。

その昔から実務経験のない講師が多数クレーム研修等の講師をしています。この講師の特徴は、クレーム対応やカスハラ対応が「ワンストローク」で収束していくかのような錯覚をしています。クレームやカスハラ対応は、あの手この手を繰り出し終息へ向かうものですから、ワンフレーズいったからと言って効果があるケースは相当少ないのです。ましてや相手に刺激を与える様なやり取りは本来御法度です。

窓口対応や接客でのカスハラ失敗対応事例

①「これ以上の対応は無理です。弁護士に相談させていただきます」といったら・・・
「おお、言えや!今すぐに呼べや!なんだよ、呼べねーのかよ。脅しなのか?この会社は客に脅しかけてくんのか?」と返り討ちに合ってしまった。研修で講師にこう言えって言われただけなのに~

②「今の行為は、○○罪だと思っています」といったら・・・
 「はぁ?だから何なんだよ?お前が何を勝手に○○罪とか言ってんの?バカなんじゃねーの、罪なんてのは裁判官がするもんだよ。大丈夫?ちょっと法律用語覚えたら使いたくなっちゃったの?みなさーん、聞いてくださーい。この人、裁判官でもないのに○○罪とか言ってきまーす」と返り討ちに合ってしまった。研修で講師にこう言えって言われただけなのに~

③研修では困ったら上司に相談してと言われたんですけどねぇ・・・
営業時間が終っても「あと少しだけ」と粘って大声で騒ぐお客さまがいたので店長に対応をお願いすると、店長は「よし分かった」と直ぐに対応を代わってくれたのはいいのですが、夜間金庫に現金を持っていく時に携帯する警棒を手でポンポンしながら「もう困るんですけど~」と言いに行ったんです。そうしたら「なんだ、おめぇ。その棒で殴るのか?ああ、やんのか?ここはそういう店なんだな。来い!」と店長を外に連れて行ってしまいました。その10分後、「久しぶりに土下座したわ~」と店長が帰ってきました。

窓口対応や接客のように対面でのカスハラは危険や暴力を伴うことがあります。ですので、相手をかえって怒らせるようなワンフレーズは慎むべきです。つまり、いくら研修で習っても実践向けではないフレーズではかえってこじらせることがあります。「弁護士」や「○○罪」というキーワードは、それを言われてハッとし焦るような方にのみ有効であって、カスハラにまでエスカレートする方のように敏感に言葉を捉える方にはかえって逆鱗に触れほぼ効き目が無いというのが筆者の経験です。そのための専門的な言い方や組織対応の仕方の習得が必要なのです。

電話対応でのカスハラ失敗対応事例

①とある金融系のコンタクトセンターで確定拠出年金の仕組みをよくご存じで無かったお客さまから「60歳まで受け取れないなんて聞いていない」とクレームの入電。上司に変わってもらい対応していたものの、お客様がやるせない気持ちで「もしあなたが同じ立場だったらどう思う?」と聞く。それに対して個人的な意見は差し控えることになっていますので」といって押し問答となり大炎上。研修で講師にこう言えって言われただけなのに~

②「上司に変われ」と言われても「当社のコンタクトセンターでは、担当者が責任をもって応対いたしますので、上司に変わることはできません」と言うように会社から言われている。当然、この日も同じように言って1時間以上「変われ!」「変われません!」を繰り返したところようやくSVが変わることになった。そうしたら「なんだよ、変われるんじゃないか!だったら初めから変われよ!どうして変われないと言ったんだ。変われるならこの無駄な時間どうしてくれるんだよ」と更に炎上。研修で講師にこう言えって言われただけなのに~

電話対応においても、カスハラは深刻な問題です。特にコンタクトセンターやお客さま相談室などで電話越しに理不尽な要求を繰り返し、相手の時間を奪う行為は精神的な負担を増大させます。しかし、テレマーケティング業界特有の慣例や、そもそもコンタクトセンター勤務者はアルバイトや契約社員、業務委託社員が多く、対応力に限界があるなど問題を多く抱えています。電話対応の場合、対面対応や接客のように身の危険はありませんが、その分、話し方や話し声だけの説得力がないと複雑な案件は終話しにくいというところが難しいのです。

自治体、公務員・職員のカスハラ失敗対応事例

①研修で講師が、クレーマーやカスハラの人よりも大きな声で謝ってくださいと指導してくれたので、カスハラ対応時に相手をしっかりと見て大きな声で「申し訳ございません!」と言ってみたら「何、デカい声出してんだよ。挑発か?ああ挑発なのか?デカい声出せば客がビビるとでも思ってるのか、バカにしてんじゃねーよ。謝れや!」と返り討ちに合ってしまった。

②窓口の営業時間の件でクレームがあった時には、実際にそうではないのですが「節電のため、全庁一斉に閉館しパソコンなどの電源も落として帰っている」と言いにくいことはそれらしい理由を付けてマニュアルにしたらいいと研修講師が言っていた。それを参考にして市のマニュアルにはないのですが同じように言ったら、後日「毎日、市役所の前を通って見ているけど、●時を過ぎても電気ついてるところがあるじゃないですか。先日、節電のための一斉に帰っているって言いましたよね。それって嘘だったんですか」と返り討ちに合ってしまった。まぁ私はこんな言い方嫌だったんですけどね~

自治体の窓口や公務員の場合、カスハラ対応以前に複雑で様々な問題を抱える住民からの相談や対応が多いため、非常にハードな顧客対応があります。また、「私たちの税金で生きてんだから偉そうにするな」等、酷いことを言われたりもしますし、そもそも住民に対して「二度と来るな」等は言い難い性質があります。しかし、自治体や行政の場合、組織対応がしやすいという特徴がありますので、事例検討を通じて予防策や事後対応策などをしっかりと協議し対策に取り組んでいただきたいと思います。そして、職員が安心して働ける環境を提供するために、カスハラ対応の研修や相談窓口を設置し、職員が心身の健康を維持しながら、高いレベルの市民サービスを提供できるよう組織全体でのサポート体制を強化することが求められます。

一方、自治体や行政での良い対応事例として「名札では名字のみとしフルネームを記載しない」「対応時間の目安を定め何分以内に対応する」「防犯カメラを増やす」や酷いケースがあればその日の対応を終了する、悪質カスハラッサーの氏名公表等、踏み込んだ対応も進んでいます。

行政や自治体の課題として、カスハラを誘発しやすい職員や応対が多いと筆者の行政機関窓口調査の結果から分かっています。したがって、まず基本的なサービスの質をあげていくことも自治体や行政機関は疎かにしない様に気を付けましょう。

会社や組織だけでは対応しきれないカスハラ:こんな時は警察や弁護士へ

カスハラがエスカレートし、会社の対応だけでは解決が難しい場合、無理をせず引き下がることは有効です。これを無理強いしてエスカレートするケースが実に多いので、「ここまで来たら警察や弁護士の力を借りる」とラインを予め定め、誰もがそのルールに従い対応できるようにシミュレーションをしていくことがカスハラ対策です。

例えば、暴力や脅迫が伴うケースは、もはや顧客対応ではなく事件です。ですので、危険な場合は警察へ躊躇なく通報するルール、名誉棄損やSNSでの誹謗中傷、業務を妨害するような行為等は警察に相談し適切な保護を受け問題の早期解決につながる対応策等、会社が事前の予測から対応策を打っておく必要があります。

まとめ:カスハラ対応なんて頑張らなくってもいい!社員が元気に楽しく働ける職場と社会をつくろう!

カスタマーハラスメント(カスハラ)に対する対応は、個々の従業員だけに負担をかけるものではなく、会社全体で取り組むべき課題です。そもそも筆者の感覚では、20年以上前からカスハラ問題はありましたが、これを無視してきた企業や経営陣、管理者がどれほど多かったことか。つまり現場の社員の負担や声や現場の実態を顧みず経営してきた会社がほとんどであると実感しています。

これまでの内容で紹介したように、カスハラはあるタイミングで現れ、時には犯罪行為にまで発展します。従業員が安心して働ける環境を整えるためには、会社が積極的に対策を講じることが重要です。しかし私たちは、カスハラ対応に対して無理に頑張る必要はありません。今や、私たちが元気に楽しく働ける職場を実現するために従業員が安心して働ける環境を会社が積極的に整えることが不可欠な時代だからです。これを機に、皆さんも自分の働く環境を見直し必要な改善提案を会社にしていきましょう。自分自身を積極的に守り良い会社へと成長させていくことが、結果的にカスハラの無い成熟した社会にもつながっていくのでしょうから。

執筆者プロフィール

アックスラーニング株式会社
代表取締役 岩﨑重国

1977年生まれ 新潟県長岡市出身 

ITセキュリティ企業、教育関連企業、研修会社を経てアックスラーニングを創業。現在は、CS戦略アドバイザー、人事顧問、業務改善等のコンサルティングや社員研修、教育コンテンツの開発、ブレンディッドラーニングの開発等をおこなっている。

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