カスタマーハラスメント対応研修コラム powered by ax-learning

介護現場のカスタマーハラスメントその実態と対策

介護現場のカスタマーハラスメントその実態と対策

2025年06月08日 12:59

高齢化社会が進む中、介護の需要が高まる一方で、介護サービス現場での不当な要求や暴言、暴力が増えてきています。そして、介護現場でのカスタマーハラスメント(カスハラ)は、職員の心身に重大な影響を与える問題で、これがきっかけで介護職員の精神的・身体的負担を増し、結果として離職率の上昇やサービスの質の低下を引き起こしている面もあります。

このような状況を改善するためには、介護現場におけるカスタマーハラスメント対策を具体的に講じることが急務です。このガイドでは、カスタマーハラスメントの実態とその解決方法について詳しく解説し、介護施設管理者や職員が直面する問題の理解と対策の参考になる情報を提供します。


目次

カスタマーハラスメントとは何か?

介護現場でのカスタマーハラスメントの特徴

介護現場でのカスハラの主な事例

カスタマーハラスメントの原因と背景

介護現場でのカスハラの対策

弁護士による支援と法的対策

まとめ:介護現場でカスハラ問題に取り組む意義


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カスタマーハラスメントとは何か?

カスタマーハラスメントは、顧客や利用者からの不当な要求や暴言、暴力行為を指します。これにより、サービス提供者は精神的・身体的に大きな負担を受けることとなります。

カスタマーハラスメントの定義

カスタマーハラスメントとは、顧客や利用者がサービス提供者に対して行う不適切な行為を指します。具体的には、次のような行為が含まれます。
1. 身体的暴力:暴力を振るう、物を投げるなどの身体的な攻撃。
2. 精神的暴力:暴言を吐く、人前で侮辱する、脅迫するなどの心理的な攻撃。
3. セクシャルハラスメント:性的な言動や、身体に触れる行為。
カスタマーハラスメントは、サービス提供者の精神的・身体的健康に悪影響を及ぼし、結果としてサービスの質の低下や職員の離職を引き起こす原因となります。特に介護現場では、利用者と密接な関係を持つため、これらの問題が直接的に職員の負担増加に繋がります。

介護現場でのカスタマーハラスメントの特徴

介護現場でのカスタマーハラスメントの特徴は、高齢の利用者が多いため、特有の問題を含むことです。
1. 認知症の影響:認知症の利用者は状況を正しく認識できないことがあり、怒りや攻撃的な行動に繋がることがあります。
2. コミュニケーションのズレ:高齢者とのコミュニケーションは難しい場合が多く、意図が伝わらず誤解や怒りを招くことがあります。
3. 感情的ストレス:介護が必要な状態は本人や家族にとって大きなストレスであり、そのストレスが職員に向けられることがよくあります。
これらの特徴により、介護現場では他のサービス業以上にカスタマーハラスメントが発生しやすい環境となっています。職員への適切な研修やサポート、家族との連携が重要です。

介護現場でのカスハラの主な事例

介護現場では、身体的暴力、精神的暴力、セクシャルハラスメントがよく見られるカスタマーハラスメントの具体例です。

身体的暴力の事例

身体的暴力は介護現場で深刻な問題となることが多いです。例えば、介護職員が利用者に対して手助けを行おうとした際に、突然の暴力を振るわれるケースが報告されています。このような状況では、職員は身体的に負傷し、恐怖心を抱えることになります。また、一部の利用者は介護サービスの質に不満を持ち、意識的に職員に対して暴力を振るうこともあります。具体的には、殴打や蹴りなどの攻撃が発生し、職員が通院を余儀なくされることもあるのです。このような事例は職員のモチベーションを低下させ、職場環境の悪化を引き起こす要因となるため、早急な対策が求められます。職員への研修や適切なマニュアルの整備が重要です。

精神的暴力の事例

精神的暴力も介護現場で頻繁に見られるカスタマーハラスメントのひとつです。例えば、利用者が職員に対して繰り返し暴言を投げかけるケースがあります。これには、侮辱や嘲笑、無視といった行為が含まれます。このような精神的攻撃は職員のメンタルヘルスに深刻な影響を及ぼします。ある職員は、利用者から「役立たず」や「無能」といった言葉を浴びせられ、精神的に大きなダメージを受けました。また、一部の利用者は認知症の影響で攻撃的な態度を取ることもあり、これにより職員が精神的に追い詰められることもあります。こうした精神的暴力の事例は、職員の離職原因にもなり得るため、適切な対策が急務です。職員間のサポート体制の強化や心理カウンセリングの導入が重要です。

セクシャルハラスメントの事例

介護現場におけるセクシャルハラスメントも重要な問題となります。具体的には、利用者が職員に対して不適切な言動を行うケースがあります。例えば、性的な冗談や不適切な身体接触が報告されています。ある職員は、利用者から頻繁に性的なコメントを受けるだけでなく、身体に触られる経験をしました。このようなハラスメントは、職員の精神的な苦痛を引き起こし、職場環境を悪化させる要因となります。また、セクシャルハラスメントが放置されると、他の職員にも悪影響を及ぼし、組織全体の士気が低下する可能性があります。このような事例に対処するためには、職員への研修や監督体制の強化が求められます。さらに、問題が発生した場合には速やかに相談窓口を利用し、必要に応じて法的措置を取ることが重要です。

利用者以外からのカスハラ事例

利用者以外からのカスタマーハラスメントでは、利用者の家族や代理人からの不当な要求や暴言が問題となっています。これにより、職員が精神的・身体的に大きな負担を被ることがあります。

利用者家族からの暴言や要求

介護現場では、利用者の家族からの暴言や過剰な要求がカスタマーハラスメントの一形態として大きな問題となっています。例えば、介護職員が慎重かつ丁寧に対応しているにも関わらず、「こんな対応では許されない」といった厳しい口調での叱責や、「他の利用者よりも特別なサービスを提供するように」といった過剰な要求が行われることがあります。これらの行為は、介護職員の士気を低下させ、業務遂行に支障をきたすばかりでなく、精神的・身体的な健康被害を引き起こす可能性があります。


さらに、家族からの暴言や要求は、しばしば感情の高まりやストレスからくるものであり、利用者の状態やケアの質とは無関係であることも少なくありません。例えば、利用者の容態が急変した際に、家族が無理な緊急対応を求め、職員が手に負えない状況に陥ることもあります。このような環境では、職員のストレスレベルが大幅に増加し、早期の離職やメンタルヘルスの問題に直結するリスクが高まります。
介護施設においては、家族と職員の間のコミュニケーションの促進や、カスタマーハラスメントに対する理解を深めるための研修が不可欠です。職員が安全に働ける環境を整えることで、介護サービスの質も向上し、結果として利用者と家族の満足度が高まるでしょう。


過剰なサービス要求と対処方法


介護現場でのカスタマーハラスメントの一形態として、利用者やその家族からの過剰なサービス要求が挙げられます。例えば、夜間に頻繁にナースコールを鳴らし続ける、無理難題を押し付けるなどの行為です。これに対処するためには、まずは利用者とその家族との間に明確なサービス範囲を定義し、どのような行為が許容されるかを明示することが重要です。
サービス契約書やガイドラインを活用し、具体的なサービス内容や提供範囲を明確にすることで、過剰な要求を未然に防ぐことが可能です。また、定期的なミーティングやカンファレンスを通じて、利用者や家族に現状を説明し、サービス提供の一貫性を保つことが重要です。
さらに、介護職員は自己保護のために適切なエスカレーションプロセスを確立し、問題が発生した場合には速やかに上長や専門家に報告することが求められます。初期の段階で問題を把握し、適切な対応を行うことで、職員のストレスを軽減し、利用者と家族との円滑な関係を維持することが可能です。
最終的には、介護現場全体の労働環境改善と共に、利用者とスタッフの双方が満足できるサービス提供が実現されます。こうした取り組みが、介護職員の離職率の低下やサービスの質向上につながることでしょう。

カスタマーハラスメントの原因と背景

カスタマーハラスメントの原因としては、介護現場の環境や利用者の健康状態、そして介護職員とのコミュニケーション不足が挙げられます。これらの要因が複雑に絡み合うことで、ハラスメントが発生しやすくなります。

認知症の影響

認知症は介護現場でのカスタマーハラスメントの大きな要因の一つです。認知症の患者は自身の行動や言動をうまく制御することが難しくなり、しばしば介護職員に対して暴言や身体的な暴力を振るうことがあります。認知症による攻撃的な行動は、職員のストレスを大幅に増加させます。
例えば、記憶障害や判断力の低下により、同じ質問を繰り返したり、簡単な作業を指示しても理解できない場合があります。これが介護職員にとって時間のロスや業務の遅延を招くだけでなく、精神的な負担となります。また、幻覚や妄想によって強い不安感を抱くことがあり、その結果として暴力的な行動に繋がることがあります。
このような状況に対応するためには、認知症に対する理解を深め、適切なケア技術を習得することが重要です。職員が認知症患者の特性を理解し、戦略的にコミュニケーションを取ることで、ハラスメントの発生を減少させることが可能となります。

コミュニケーション不足によるすれ違い

介護現場において、コミュニケーションの不足はカスタマーハラスメントの一因となります。利用者の家族と介護職員の間で情報の共有や説明が不十分な場合、誤解やすれ違いが生じやすくなります。この結果、利用者やその家族が不満を抱き、ハラスメント行為に及ぶことがあります。
例えば、介護方針や日常ケアの内容について十分な説明がされていない場合、家族が不信感を抱く可能性が高まります。利用者の状態が悪化した場合にも、迅速かつ正確な情報提供がなされないと、家族は職員の対応に不満を感じることがあります。
コミュニケーション不足によるすれ違いを防ぐためには、定期的なミーティングや報告書の作成が効果的です。家族に対しては、利用者の状態やケアの進行状況を明確に伝えることで、信頼関係の構築が進みます。また、職員間の情報共有も重要で、シフト交代時の引き継ぎなどで詳細な情報を共有することがハラスメントの予防に繋がります。

感情的ストレスとその表れ

介護職員が抱える感情的ストレスもカスタマーハラスメントの要因となります。介護の現場は肉体的にも精神的にも過酷であり、常に高いストレスがかかっている環境です。このような状況下では、職員自身が感情的に不安定になりやすく、利用者やその家族からの言動に過敏に反応することがあります。
感情的ストレスは、例えば夜勤や長時間労働、急な対応が求められる緊張感などが原因となります。これにより、疲労が蓄積し、冷静な判断や対応が難しくなります。その結果、利用者からの些細な要求や不満にも過剰に反応し、トラブルが発生することがあります。
感情的ストレスを軽減するためには、職員の労働環境の改善が欠かせません。定期的な休息やシフト制の見直し、メンタルヘルスケアの充実が必要です。また、職員同士のサポート体制も重要で、悩みやストレスを共有できる環境を整えることが求められます。こうした取り組みが、カスタマーハラスメントの予防と解消に大いに役立ちます。

介護現場でのカスハラの対策

介護現場におけるカスタマーハラスメントの対策について解説いたします。具体的な規定の策定や職員への研修活動、相談窓口の設置など、実践的な取り組みが求められます。

ハラスメントに関する規定の策定

カスタマーハラスメントに対する効果的な対策の一環として、まずは明確な規定の策定が重要です。ハラスメントの具体例を挙げ、それに対する対応策や罰則を明示することで、職員が安心して働ける環境を整えることができます。例えば、身体的暴力や精神的暴言、セクシャルハラスメントなどの行為を明確に禁止し、それぞれの違反行為に対する処置を定めることが必要です。また、ハラスメントの被害を受けた職員が安心して報告できるよう、匿名の報告手段や保護措置を規定することも大切です。このような規定を整備することで、ハラスメントの防止と早期発見に繋がります。

職員への研修・啓発活動

介護現場でのカスタマーハラスメント対策には、職員への継続的な研修と啓発活動が欠かせません。職員がハラスメント行為の具体的な事例や対処法を理解することで、適切な対応が可能となります。例えば、研修ではハラスメントの兆候を見逃さずに察知する方法や、適切なコミュニケーション術を学ぶことが重要です。また、職員同士での模擬訓練や実際の事例を基にしたディスカッションを通じて、実践的なスキルを身につけることが求められます。さらに、研修終了後も定期的なフォローアップを行い、新たなハラスメント事例や法規制の変化に対応していくことが重要です。

相談窓口の設置と利用者への説明

ハラスメント問題に迅速に対応するためには、相談窓口の設置が不可欠です。職員や利用者が安心して相談できる環境を整えることで、ハラスメントの早期発見と解決が期待できます。具体的には、匿名相談を受け付ける専用の電話やメール、オンラインフォームを用意し、相談内容は厳重に守秘されることを明示することが大切です。また、相談窓口の存在を広く周知するために、利用者やその家族に対して定期的に説明会やパンフレットを配布することも効果的です。これにより、全ての関係者がハラスメントに対する理解を深め、適切な行動を取ることができるようになります。

弁護士による支援と法的対策

介護現場でのカスタマーハラスメントに対する法的な支援は、弁護士の協力が不可欠です。これにより、職員の法的保護と適切な対応が可能になります。

弁護士との協力体制の構築

カスタマーハラスメントの問題に直面する介護現場では、弁護士と協力する体制を構築することが重要です。弁護士は法的な知識と経験を持っており、職員が受けるハラスメントに対する適切なサポートを提供します。具体的には、法的な文書の作成や相談、そして必要に応じた法的措置の提案が含まれます。
また、定期的な法的研修を実施することで、職員がハラスメントに対する法的な理解を深めることができます。これにより、職員自身がハラスメントを適切に判断し、早期に対処する力を養うことができます。弁護士との協力を通じて、ハラスメントに対する施設全体の対応力を高めることができるのです。

法的アドバイスとサポートの窓口

介護現場でのカスタマーハラスメントに対応するためには、法的アドバイスとサポートを受けられる窓口を設置することが効果的です。職員が必要な時に相談できる場があることで、早期の問題解決が可能になります。
サポートの窓口では、弁護士や専門の相談員が常駐し、職員が日々の現場で直面する法的な問題について、迅速かつ適切なアドバイスを提供します。特に、身体的暴力や精神的暴力、セクシャルハラスメントといった具体的な事例に対する対応方法についてのアドバイスが求められます。
さらに、これらの窓口は職員だけでなく、利用者の家族にも開放することで、施設全体のハラスメント防止の意識を高めることができます。法的なサポートとアドバイスを通じて、職員の安心感と施設全体の労働環境の改善が期待できます。

まとめ:介護現場でカスハラ問題に取り組む意義

介護現場でのカスタマーハラスメント(カスハラ)問題への取り組みは、介護職員の精神的および身体的な健康を守る上で非常に重要です。カスハラは介護職員に極度のストレスを与え、その結果、サービスの質を低下させるだけでなく、離職率を高める大きな原因となっています。そのため、カスハラの対策は職場環境の改善や職員のストレス軽減につながります。
具体的な対策として、ハラスメントに関する規定の策定や職員への研修、相談窓口の設置が挙げられます。このような取り組みにより、職員が安心して働ける環境が整い、ひいては介護サービスの質の向上にも寄与することが期待されます。

また、法的なサポートを受けることで、更なる安心を提供することも可能です。弁護士との協力体制を構築し、必要な時にサポートを受けられる体制を整えることで、職員や介護施設全体の安心感が増します。
最後に、カスハラ対策は利用者やその家族との円滑なコミュニケーションを促進し、互いの信頼関係を深めることにもつながります。このように、カスハラ問題に真剣に取り組むことは、介護現場の健全化とサービスの質の向上に不可欠な要素です。


【執筆者】

アックスラーニング代表 岩崎重国(プロフィールへ)

◆参考Webサイト◆
カスハラの事をもっと知りたい: https://www.ax-learning.jp/column/customer-harassment

カスハラ講演会を開きたい: https://www.ax-learning.jp/lecture/customer-harassment

厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/

あかるい職場応援団: https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/


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