アックスラーニングのカスタマーハラスメント対応研修コラム

ビジネスと人権:カスタマーハラスメント対応の基盤となる考え方

ビジネスと人権:カスタマーハラスメント対応の基盤となる考え方

2025年04月07日 13:10

企業活動と人権尊重は切り離せない関係にあります。これは企業の社会的責任(CSR)を超え、「ビジネスと人権」という国際的な潮流として、企業の持続可能性を左右する重要な要素となっています。特に近年、カスタマーハラスメントなど様々な形で現れる人権侵害に対して、企業がどのように対応すべきかが問われています。本稿では、カスタマーハラスメント対応を含む企業活動全般において基盤となる「ビジネスと人権」の考え方について解説します。


目次

1.ビジネスと人権の基本概念

2.国際的なフレームワーク

3.人権デューデリジェンスの実施

4.カスタマーハラスメントと人権問題

5.企業における人権尊重の実践


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1.ビジネスと人権の基本概念

▼人権とは何か
人権とは、すべての人間が生まれながらにして持つ、譲ることのできない基本的権利と自由を指します。人種、性別、国籍、宗教などに関わらず、すべての人に平等に保障されるべきものです。これには、生命権、自由権、平等権、労働権など多岐にわたる権利が含まれます。

▼ビジネスと人権の関係性
ビジネスと人権という概念は、企業活動が人権に与える影響とその責任を明確にするものです。企業は経済活動を通じて社会に価値を提供すると同時に、その活動が人々の人権に悪影響を及ぼさないよう配慮する責任があります。

2.国際的なフレームワーク

▼国連ビジネスと人権指導原則
2011年に国連人権理事会で承認された「国連ビジネスと人権指導原則」は、企業と人権の関係を規定する国際的な基準となっています。この原則は以下の3つの柱で構成されています:
・国家の保護義務:人権を保護する国家の義務
・企業の尊重責任:人権を尊重する企業の責任
・救済へのアクセス:人権侵害を受けた人々への救済手段の確保

▼SDGs(持続可能な開発目標)との関連
「ビジネスと人権」はSDGsの複数の目標と密接に関連しています。特に目標8「働きがいも経済成長も」や目標10「人や国の不平等をなくそう」は、企業活動における人権尊重と直結しています。

3.人権デューデリジェンスの実施

▼人権デューデリジェンスとは
人権デューデリジェンスとは、企業が自社の事業活動およびサプライチェーンにおいて人権への負の影響を特定し、防止・軽減するためのプロセスです。これは単なるリスク評価ではなく、継続的な改善を目指す取り組みです。

▼人権デューデリジェンスの4つのステップ
・人権への影響の評価:事業活動が人権に与える潜在的・実際的な影響を特定・評価
・調査結果の統合と対処:評価結果に基づく対策の実施
・対処の有効性の追跡:取り組みの進捗状況と効果の監視
・情報開示:人権への影響と対応策について透明性を確保

▼実施のポイント
人権デューデリジェンスを効果的に実施するためには、経営層のコミットメント、専門知識の活用、ステークホルダーとの対話が不可欠です。また、形式的な実施ではなく、実質的な成果を重視することが重要です。

4.カスタマーハラスメントと人権問題

▼カスタマーハラスメントの定義と実態
カスタマーハラスメント(通称:カスハラ)とは、顧客が従業員に対して行う不当な言動や要求を指します。これは、従業員の尊厳や人権を侵害するものであり、深刻な人権問題です。

人権の観点からのカスハラ対応
カスハラ対応を考える際には、次の人権的視点が重要です:
・従業員の労働環境を守る権利
・心身の健康を維持する権利
・尊厳をもって扱われる権利
・安全に働く権利
企業は、これらの権利を保護するための明確な方針と具体的な対応策を整備すべきです。

5.企業における人権尊重の実践

▼人権方針の策定
企業は、国際的な人権基準に基づいた人権方針を策定し、公表すべきです。この方針には以下の要素を含めることが重要です:
・国際的に認められた人権基準への言及
・企業のコミットメント
・適用範囲(従業員、サプライヤー、顧客など)
・実施と監視の方法
・救済メカニズム
・人権教育、研修の実施

全従業員に対して、人権に関する基本的な知識と理解を深めるための教育・研修を定期的に実施します。特に、顧客と直接接する従業員には、カスハラに関する具体的な対応トレーニングが必要です。

▼苦情処理メカニズムの整備
人権侵害が発生した場合に、被害者が安心して通報・相談できる仕組みを構築することが重要です。これには以下の要素が含まれます:
・アクセスしやすい相談窓口(内部・外部)
・匿名性の確保
・報復からの保護
・公正で透明性のある調査プロセス
・適切な救済措置

▼経営者、人事担当者の役割
経営者には、「ビジネスと人権」に関して以下の責任があります:
・人権尊重の企業文化の醸成
・人権方針へのコミットメントの表明
・必要なリソース(人材・予算)の配分
・取締役会レベルでの人権問題の監視

人事部門は、企業における人権尊重の実践において中心的な役割を担います:
・人権研修プログラムの開発・実施
・苦情処理メカニズムの運営
・人権パフォーマンスの評価・モニタリング
・採用昇進における差別防止

▼ビジネスと人権への取り組みの効果
リスク管理の強化
人権尊重への取り組みは、以下のリスクを軽減します:
・法的リスク(訴訟、罰金など)
・評判リスク(ブランドイメージの毀損)
・操業リスク(労働争議、従業員の離職など)
・財務リスク(投資引き上げ、消費者不買運動など)

企業価値の向上
人権尊重への積極的な取り組みは、以下の面で企業価値を高めます:
・従業員のエンゲージメント向上
・顧客ロイヤルティの強化
・投資家からの評価向上
・新たな市場や取引機会の創出


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まとめ:
「ビジネスと人権」は、企業の持続可能性にとって不可欠な要素となっています。カスタマーハラスメントへの対応を含め、あらゆる企業活動において人権尊重の視点を取り入れることは、リスク管理のみならず企業価値の向上にもつながります。

経営者から現場の従業員まで、組織全体が人権尊重の重要性を理解し、日々の業務に反映させることがこれからのビジネスには求められています。「人権を尊重する企業」であることは、今や企業の社会的責任を超え、ビジネスの成功と発展のための基本条件となっているのです。企業が「ビジネスと人権」の課題に真摯に向き合い、人権デューデリジェンスを実施することで、すべてのステークホルダーに価値を提供する持続可能なビジネスモデルを構築することができるでしょう。


【執筆者】

アックスラーニング代表 岩崎重国(プロフィールへ)


◆参考Webサイト◆
カスハラの事をもっと知りたい: https://www.ax-learning.jp/column/customer-harassment

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