
ビジネスと人権の視点から考えるカスタマーハラスメント対応研修の重要性と企業が取るべき対策
2025年04月07日 13:21
現代のビジネス環境において、「ビジネスと人権」の問題はますます重要性を増しています。直近でもエンタメ業界での人権問題が大きく取り上げられ、企業規模や業種を問わず人権尊重への取り組みが喫緊の課題となっています。この様に「ビジネスと人権」の重要性や課題が浮き彫りとなる背景は、企業が持続可能な成長を遂げるために、単に利益を追求するだけでなく従業員や顧客、取引先など、あらゆるステークホルダーの人権を尊重し保護する責任があるからなのです。2025年4月から義務化された「「カスタマーハラスメント対応」は、この責任を具体的に果たすための重要な一歩となるでしょう。
そこで本稿では、カスタマーハラスメントがいかに深刻な人権侵害であるか、また企業がどのように対応すべきかについて、最新の事例とともに解説します。
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目次
1.カスタマーハラスメントとは何か:人権侵害の新たな形態
2.「ビジネスと人権」とは?
3.先進企業の取り組み事例
4.人権デューデリジェンスの実践:企業が行うべきステップ
1.カスタマーハラスメントとは何か:人権侵害の新たな形態
カスタマーハラスメント(略して「カスハラ」)とは、顧客や取引先からの理不尽な要求や暴言、暴力などによって従業員の尊厳を傷つける行為を指します。厚生労働省も企業向けの対策マニュアルを整備するなど、社会的にも取り組みが進んでいます。
カスタマーハラスメントの例としては以下のようなものが挙げられます:
・過剰なサービス要求
・長時間にわたる謝罪の強要
・人格を否定するような発言
・セクシャルハラスメント
・脅迫や暴力
これらの行為は、従業員の身体的・精神的健康を著しく損ない、基本的人権を侵害し従業員の就労環境を著しく破戒するものです。
2.「ビジネスと人権」とは?
「ビジネスと人権」とは、企業が事業活動を行う上で、人権侵害を引き起こさないように配慮し、万が一、人権侵害が発生した場合には、適切な対応を取る責任を指します。人権デューデリジェンス(人権DD)という言葉も重要です。人権DDとは、企業が増大する人権リスクを調査・特定し、防止およびトラブルを対処する取り組みのことです。
▼カスハラが人権侵害である理由
カスハラは、従業員の精神的な健康を害し、労働意欲を低下させるだけでなく、最悪の場合、退職に追い込まれるケースもあります。企業は、従業員が安全で安心して働ける環境を提供する必要があります。カスハラを放置することは、この義務を怠っていることになり、企業としての社会的責任を果たすことができません。
▼取引先からのハラスメントも人権侵害!
見落としがちなのが、取引先からのハラスメントです。優越的な立場を利用した不当な要求や暴言は、従業員の心身を深く傷つけます。
3.先進企業の取り組み事例
株式会社アシックスは、従業員の人権を守る取り組みの一環として、カスタマーハラスメント方針を策定しています。2024年2月に開催された「サステナブル・ブランド国際会議2024東京・丸の内」で同社のエグゼクティブアドバイザー吉川美奈子氏は、「お客様に対してサービスをするというのは当然のことですが、過剰な要求があった時でも、上司も含めてお客様に対応しなければと思ってしまうのが実情。そこで、会社としてそれ以上対応しなくて良いというラインを明確にし、従業員に対して、あなたたちはしっかり守られているというメッセージを示している」と述べています。アシックスの事例は、「お客様は神様」という従来の考え方から脱却し、従業員の人権も等しく尊重する企業文化への転換を示しています。
4.人権デューデリジェンスの実践:企業が行うべきステップ
カスタマーハラスメント対策は、より広範な「人権デューデリジェンス」の一部として位置づけられます。人権デューデリジェンスとは、企業が事業活動における人権リスクを特定し、予防・軽減するための一連のプロセスです。
国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、企業は以下の三つを実行・運用することが求められています:
1. 人権方針の策定
企業は「人権を尊重する責任を果たす」というコミットメントを、企業方針として社内外に表明する必要があります。カスタマーハラスメント防止も明確に含めた方針を策定しましょう。
2. 人権デューデリジェンスの運用
すべての事業活動の過程における人権への負の影響を特定し、予防・軽減する取り組みが必要です。具体的には:
・カスタマーハラスメントリスクの特定と評価
・防止のための研修実施
・発生時の対応手順確立
・取組状況の報告と情報開示
3. 救済メカニズムの構築・運用
ハラスメントが発生した場合の相談窓口設置や、被害者への適切なケア提供など、救済のための体制整備が重要です。
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まとめ:
カスタマーハラスメント対応は単なる法令遵守の問題ではなく、人権尊重という企業の社会的責任の重要な一側面があります。「人権侵害をしない」という守りの人権ではなく、社会に存在するあらゆる人権問題をビジネスを通じて解決していこうとする先進的な人権への取り組みが今後の企業に求められています。
カスタマーハラスメント対応義務化だからではなく、今から自社のカスハラ対策を含む人権方針や体制を整備することが、従業員の安全と尊厳を守り持続可能な企業経営につながります。人権を尊重する企業文化の構築は、従業員のエンゲージメント向上、顧客からの信頼獲得、さらには企業価値の向上にも直結する重要な経営課題なのです。
【執筆者】
◆参考Webサイト◆
カスハラの事をもっと知りたい: https://www.ax-learning.jp/column/customer-harassment
カスハラ講演会を開きたい: https://www.ax-learning.jp/lecture/customer-harassment
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